青葉台エスカリエ
たとえばカンバスのようなテナントビル


山手通りから路地を抜け、目黒川を渡り少し歩いたところにある目黒区青葉台。いわゆる“裏ナカメ”と呼ばれている地域である。中目黒駅から徒歩10分弱と決してアクセスが良いわけでないにもかかわらず、目黒川沿いの賑やかさと住宅街の閑静さが調和した独特の雰囲気を持つこのエリアは人気アパレルショップや美容院、美食の名店などが点在し、“わざわざ”人々が集まる中目黒でも人気の高い地域である。
 敷地はそんな裏ナカメの小さな交差点の角地にある。クライアントから『裏ナカメの新たなアイコンになり、個性的でありながらもテナントが個性を出し易い建物にして欲しい』という要望を受け、私たちは『“わざわざ”人々が集まる地域に“わざわざ”お店を出すテナントに好まれるテナントビル』を考え始めた。
 厳しい高度斜線もこの地域のヒューマンスケールを生み出している敷地の特徴として捉え、建物高さを抑えながらも低い階高に対しては逆梁を用いて開放感を演出するなどの工夫を行った。また基準階を設けて容積率を確保することは容易だったが、単純な基準階の積み重ねでは一般的に階によってその価値が変わってしまうため、あえて基準階を設けず、地下1階~地上3階の全ての部屋に対して平面プランや階段でそれぞれの特徴を持たせた。つまり『“わざわざ”その部屋を借りたい』と思えるような建物だ。
 “わざわざ”とは“特別な想いがある”ということである。人々が特別な想いで訪れる場所に、特別な想いでそれぞれのお店を開くことができるテナントビル、それはたとえば自由に絵を描けるカンバスのようなテナントビルである。
                          (坂井泰之/勝岳史建築設計事務所)

★170617-7085-P

★170617-7036

★170617-7163

★170617-7179
 撮影:日暮雄一/日暮写真事務所